決意


 いつも、美貴は考える。
 美貴にとって、亜弥ちゃんってどんな存在だろう。
 その逆は?
 “大好き”なんだけど、その“大好き”はどんな“大好き”なんだろう。
 美貴は、いつも考えてる。


 ふと思い立って、昔の映像の記録を引っ張り出して、画面に映す。
 それを見ながら、美貴はぷふ、と淋しそうな、悲しそうな笑いをこぼした。
 亜弥ちゃんが結婚したらどうしよう、とか言ってた自分が、何だか滑稽に見えた。
 今の自分から見ると、凄く子供に見える。

 「わっかいなぁー…」

 そう呟いて、苦笑をひとつ。また映像に集中する。
 まるで、ほんとに男と女だった。

 「美貴って、亜弥ちゃん大好きすぎだっつーの」

 昔の自分を、まるで他人のように見る。
 心境的には、昔の自分はもはや他人だった。

 あれから、いろいろありすぎた。
 年月は、周囲の環境を、人々の心を、何もかもを変えていった。

 「あの時は、亜弥ちゃんが先に嫁に行く前提で話してたなぁ…」

 そう独りごちながら、再生の終わったディスクを取り出す。ケースに仕舞う。もとあった場所に戻す。
 そうして、たぶんもうしばらくコレは見ないだろうな、と思う。
 もしかしたら、もう…。

 あの時、“美貴が結婚したら”について話した時。亜弥ちゃんは結構淡白だったけど。
 今は、どう思ってるんだろう。
 
 聞いてみたかった。
 でも、聞きたくない。

 別に、友達だった。普通の友達より仲がいい友達だった。ただ、それだけだった。
 それなのに。
 どうして今、裏切ったような気分になるんだろう。
 お互い、彼氏だっていた。
 それでも、仲のいい友達だった。

 まるで、他人を傷つけようとして、自分が傷ついてるような感覚。

 「亜弥ちゃん…」

 逢いたい。
 声を聞きたい。
 叱ってほしい。
 静かに諫めてほしかった。
 
 永遠なんてないじゃん、とか。嘘つき、とか。
 自分自身でそう思う。
 昔は若かったとか、そんな言葉では片付けたくない。想いは、変化はしたけれど、なくなったわけじゃない。

 でも…。

 「亜弥ちゃん離れ、しなきゃね…」

 感傷的に微笑んで、部屋を出る。
 扉が閉まる。
 
 残されたのは、誰もいない空間。
 テーブルの上には、1枚の紙切れ。

 『美貴は、結婚するよ、亜弥ちゃん』