あまりの寒さに目を覚ますと、外は一面真っ白だった。
「は?」
思わず、自分の目を疑う。
ここは何処だ。
北海道か?
「ひとみちゃん、おはよう!」
下がるひとみのテンションにはお構いなしの、元気のいいアニメ声が鼓膜を叩く。
うんざりとベッドから這い出すと、我が家の如く振舞う幼馴染の石川梨華がいた。
ひとみは、気付かれないようにうへ、と舌を出す。
朝から元気が良すぎだ、と内心毒づく。
「ねぇねぇ、ひとみちゃん、雪だよ雪!」
いつも以上にはしゃぐ梨華を、はいはいと軽くあしらって寝室を後にする。
洗面所に入る前に後ろを窺うと、思ったとおりふくれっつらをした梨華が金魚の糞よろしく後ろに立っていた。
ふくれっつらは、いつまでたってもふくれっつら。
「……………」
「…………………」
「………」
「……わーったよ、雪だから何」
睨めっこに、先に根負けしたのはひとみのほうだった。
諦めたように言うと、今までぶーたれていた梨華の表情が、一瞬にしてぱっと輝く。
犬みてぇ。
口には出さず、微苦笑をもらす。
「ね、ひとみちゃん、公園行きましょ?」
歯ブラシを銜えてしゃこしゃこやっていたひとみは、その梨華の発言で完全に動きを止める。
ぎぎぎ、と音がしそうなくらいぎこちない動作で梨華を振り返ると、その表情は何を言っても止められないものになっていた。
「…ヤだよ。梨華ちゃん一人で行っといで」
歯ブラシを銜えたまま、そう言ったつもりだった。
実際は、ふにゃふにゃ言ってるようにしか聞こえない。
それを、梨華は自分の良いように解釈する。
「じゃ、決まりね。すぐ朝ごはん作るから!」
張り切って、洗面所を後にする。
残されたひとみは、口の中を綺麗にしてから、叫んだ。
「イヤだって言っただろー!?」
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